2010年4月8日木曜日

近大の紀要に論文を書きました。

中川克志 2010 「雑誌『音楽芸術』における電子音楽をめぐる二つのレトロ・フューチャー-電子音楽とコンピュータ音楽輸入時の進歩史観の変質?」 近畿大学文芸学部(編)『文学・芸術・文化』21.2:210-236。

前の精華の紀要論文と同じで、これも去年の春に書いたものです。
書誌情報等は3.学術論文 (Audible Culture)をご参照ください。本文もあります。

2007年に博士論文を書き終えた後、とりあえず「日本でできるアーカイヴ調査」と「1960年代の現代音楽の受容状況の調査」をしたいと思って、『音楽芸術』の1950‐60年代のものを調査してそこで見つかったテーマをまとめたものです。
「電子音楽」と「コンピュータ音楽」が日本に導入された頃、1954年と1967年に書かれた二つのレトロ・フューチャーを比較することで、どんな音楽の未来が想像されていたかをまとめて比較しました。けっこう単純な議論でここから大きな展望が開けるといった類の論文ではないですが、たぶん、日本の電子音楽に関心のある少数の人には便利なものになっただろうと思ってます。

2007-2008年は50-60年代の『音楽芸術』を通読してたのですが、一昔前の雑誌は、現在と物事のパースペクティヴが違うので面白いですね。
幾つかの課題を出せたけど、それとは別に、この論文の続き(コンピュータ音楽とライブ・エレクトロニクスの受容状況を比較したもの)が、10月に出る京都造形大の紀要に載るはずです。
また「日本でできる雑誌調査」という研究手法にはまったこともあり、ちょっと別の関心から大正期の音楽雑誌を調査した成果が、京都国立近代美術館の研究紀要に出せるはずです(まだ修正中でどういうオチになるかよう分かりませんが)。